歯周病と糖尿病の負のスパイラル
歯周病患者の歯肉溝にて産生される炎症物質は血流によって全身を循環します。この血中の炎症物質はインスリンの機能を低下させることにより、2型糖尿病を誘発します。さらに2型糖尿病は唾液の減少や免疫機能の低下を通じて、歯周病をより悪化させてしまいます。結果として、歯周病と糖尿病の負のスパイラルに陥ってしまうことが問題となります。
歯周病治療に糖尿病改善(HbA1c低下)の効果あり! Teeuw et al., Diabetes Care (2010)
口腔内におけるバイオフィルムの形成は虫歯や歯周病の原因になるだけではありません。
炎症や血流を通じて、全身の様々な疾病の原因となります。
歯周病とは歯と歯肉の間にある歯肉溝にて起こる疾病です。歯周病菌が歯肉溝にてバイオフィルムを形成すると、炎症が起こり、最終的に歯の土台となる骨や歯肉がゆるみ、抜歯の原因となります。実は国内の抜歯原因の第一位(37.1%)を占めるのが歯周病です。
2018年 8020推進財団 『第2回 永久歯の抜歯原因調査 報告書』
プラーク(歯垢)を介して歯周病菌が歯肉溝に感染し、炎症が起こる。口臭が強くなる。
歯茎や歯の土台となる骨が溶け、歯肉が下がり、歯がグラグラする。
近年、歯周病菌の全身への感染や歯周病由来の慢性的な炎症が、全身の様々な疾患を誘発することが明らかになってきました。
歯周病によって歯がグラグラすると、咀嚼力が低下し、脳への刺激が減少してしまいます。脳への刺激は認知機能の低下につながります。
それだけでなく、近年では歯周病菌の産生する毒素が脳にまで到達し、アルツハイマー病の原因となることが示唆されています。
Dominy et al., Sci. Adv. (2019)
歯周病患者の歯肉溝にて産生される炎症物質は血流によって全身を循環します。この血中の炎症物質はインスリンの機能を低下させることにより、2型糖尿病を誘発します。さらに2型糖尿病は唾液の減少や免疫機能の低下を通じて、歯周病をより悪化させてしまいます。結果として、歯周病と糖尿病の負のスパイラルに陥ってしまうことが問題となります。
歯周病治療に糖尿病改善(HbA1c低下)の効果あり! Teeuw et al., Diabetes Care (2010)
日本人の死因のうち5番目に多いのが肺炎です。その中でも高齢者に多い誤嚥性肺炎の原因は口腔内の病原菌の肺への感染であり、その原因菌は歯周病の原因菌と重複しています。高齢者への週1回のオーラルケアで、2年間の肺炎発生率が19%から11%に低下したという報告もあります。
Yoneyama et al., Lancet (1999)
妊娠中はホルモンバランスの変化により、歯周病のリスクが増加します。さらに、歯周病は早産や低体重児出産の危険率を2倍以上に高めることも報告されています。
Vergnes & Sixou, Am. J. Obstet. Gynecol. (2007)